「戦うカレン民族−ビルマ辺境訪問記」
凱風社刊 定価1,300円(税別)

 それにしても、なぜこんなにも慎重に弾を使うのだろうか。もっと次から次に攻撃すれば、敵の接近を阻止できるのに。
「 弾がないんだ」
司令官は言った。冗談かと思ったが彼はいたって真面目である。こともあろうに戦争の現場で弾薬が不足しているとは・・・・。
 解放軍に入隊したカレン兵には、家族や友人をビルマ国軍に殺されたり、財産を奪われたり、姉妹を慰安婦として連行されたりしたものが多い。大勢の家族の中でたった数人だけが生き延びたという例も少なくない。
「戦うより他に道は残されていなかったんだ」
よくそんな声を聞いた。暴行と略奪によって生じた深い傷は激しい憎悪となって彼らの士気を支えている。
( 共に本文中から「恐怖のキング・ドラゴン作戦」より)